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制作秘話⑥追憶・京子&八尋編


気がついたら前回の更新から随分と経ってしまいました。

お久しぶりです! 深海です。


今回は少し長くなりますが追憶編第2話と3話、京子と八尋の過去の制作秘話を纏めて


お話させて頂きます!



※制作秘話にはネタバレを含みますので、追憶編を攻略後に読んでいただくことを推奨いたします。






担当キャラの交換について


元々構成上二人の過去編は纏めて書きたいと思っていたので、その分鏡太郎を神凪にお願いしたという成り行きです。

八尋の事を1番分かっているのは神凪なので、「こういう時八尋だったらどうする?」等と色々質問しながらシナリオを作っていくのはとても新鮮でした!




全体の構成


以前の制作秘話で「デヰツァのキャラはそれぞれ対になるように作っている」というお話をしましたが、追憶編では更に深掘りして、それぞれの”違い”を強調するような構成にしました。


今よりもっと格差のあった時代に、全く違う背景を持った4人がどうして同じ「彼女」を愛するようになるのか……という部分を上手く補完出来ていたらいいなあと思っています。


(細かい事はさて置き、第一は「本編を遊んで頂いた方にもっと彼らを好きになってもらいたい!」という気持ちで神凪と書いていました)




キャラクターデザイン


こちらの2人(と久遠家の2人)は私がデザインさせて頂きました!これが最初に神凪に見せたイメージだったと思います。

多分シナリオが出来る前だったかな……?



追憶編2話・3話は、一度京に感情移入して貰ってから仁視点を見てもらいたいという思いがありました。

その為京は仁と比べ、キャラデザやシナリオをプレイヤーがギャップを感じにくいように作っています。





京の幼少期


本編京子ルートのテーマの1つは”家族”でした。

京の産まれは東京の貧民窟で、親の顔も知りません。

久遠家での生活も酷いものでしたが、それでもあの日までは何とか家族の形を保とうとしていました。


京が家を飛び出たのは何故あの日だったのか。

それは別に辛い現場を見たからとかではなく、今まで家族だと思っていた(思おうとしていた)人との決定的な違いに気付いてしまったからなんですね。


京は別に、仁に嘘を吐かれていようが、利用されていようが実はどうでも良くて、それよりも仁が”自分が辛いと思っている環境を心の底から楽しんでいる”事にショックを受けます。


殴られても、辛い仕事をさせられても、それは大人(久遠)対子供(兄弟)の問題で、仁とは同じ立場だと思っていた……けれどもそれは勘違いで、”ここでも自分は本当は1人だった”という事を悟ってしまったのがあの日でした。


待宮家に引き取られてからは家事手伝いをしていましたが、中々外で仕事をする事は出来ず荒れていました。(15~17辺りが1番大変だった)

今でもその名残で待宮家にはお手伝いさんが入っていません。


20の頃、待宮がカフェーを開業する事を切っ掛けに女給として働きに出る事になります。

女装には「世間には本当の自分で顔向け出来ない」という意味もありますが、あの日の事も関わっているとかいないとか……?




京のその後


本編のラストで「なんで付き合わないの!?」という声が多かったのですが、これは本当に私の文章力が無くて申し訳無いなって感じです……笑


あの時花純のセリフは文面通りの意味では無くて、「昔の事をちゃんと話してくれるまではそういう関係にはなれません。でも、すぐには辛いでしょうから、貴方が話せる日が来るまで私は傍で待っています」という気持ちを崩して伝えています。


それから暫く経ってついに本当のことを話せたのが追憶編2話のラストなので、あそこは2人が付き合い始めたシーンだったんですよね(分かりにくい)


京にとって、花純を守ることは過去の贖罪でもあります。

帳が来ても八尋が来ても全力で戦ってくれると思うので、その後がとても楽しみですね!





仁の幼少期



皆さんから見て、八尋は一番理解しがたい性格の持ち主であったことが多いのではないでしょうか。当たり前ですよね。一般的な日本人は人を殺して好きな子に差し入れたりしません。

社会的には破綻した性格の持ち主ですが、彼には彼なりの感情があって動いている事は絶対書きたいと思っていました。


追憶編では仁と京の二つの視点から同じ場所を書くことで、プレイヤーが自由に彼らの価値観について考えられるようにしています。

京に感情移入する方が殆どだと思っていますが、一割くらいの方は仁に感情移入できるくらいのバランスになっていたら嬉しいです笑



仁は10歳までごく普通の家庭に生まれ育ちます。

このごく普通が仁にとっては大変な苦痛でした。


狭い漁村では常に仁の価値観は否定されます。

それは普通の人からは当たり前の事だったり、覚えてもいないような小さなことだったりするでしょう。

そしてある日普通の兄を海に突き落とし、普通の家を捨てて東京に逃げ出します。


東京で出会った異常な一家は仁を否定せずに迎え入れてくれます。

世間にとっての異常は彼にとってはとても居心地のいい場所でした。


勇くんとの交流の中で、仁が不具者に自分を重ねる様な表現がありますが、彼の根底にはここが一番近いんじゃないかと思っています。(社会に受け入れられない理不尽感や欠落感等……)

勝手に重ねられる方は大迷惑ですが笑


仁の感覚としては身体が少数派である事も、価値観が少数派である事も同じなんだと思います。

(ちょっと難しいかもしれない)



仁のその後


京が家を出てから、仁はぼんやりと「僕を受け入れてくれた兄さんはあちら側の人だったんだな」という寂しさを抱えながら育ちます。

とはいえそこまで人に執着しないので、追いかけたりはしないのですが。


あんな事をしておきながら京の事は好きなので、再会したときは相当喜んだと思います!

取引こそ持ち込みますが、元から京の居場所は光世に告げ口する気はありません。

でも当たり前に京は仁の事は信用してないので、裏切られてしまいますが……笑


追憶編のラストでは、八尋が花純が生きている事に触れる場面があります。

ここはあの日の仁との対比の意味もありますが、未だに八尋が徹底的に相手の内面を無視している描写でもあります。


八尋の心を一番動かすのは「僕なんかに笑顔を向けてくれる」ところだと思うのですが、いつか彼自身がそれを壊し続けていることに気づく日は来るのかなあ……なんて思っています。

(少なくとも本編ではその前に帳が参上しそうですね)





久遠家について


光世についても、八尋と同じく拒否感を感じた人は多いんじゃないでしょうか。

当たり前だと思います。悪い人なので。


ですが、実は時代背景的にはそこまで劣悪な環境でもなかったりします。

今と違って子供を保護するという感覚が薄いのは勿論、児童労働が当たり前の時代です。

やらせている仕事は最悪ですが、餓死してしまうような浮浪児も多い中、普通に働く事も出来ないような子達を集めて食わすのは大変な事で、ご近所からの評判はあながち間違いでもありません。(やらせている事は本当に最悪です)


今の私達と感覚の近い京から見れば最悪な環境ですが、そこでしか生活できない仁や勇はあの家を否定しません。


ちなみに光世自身は自分の事を子供好きだと思っています(怖いね)



デヰツァ本編時の光世と勇



久遠家の設定を作るにあたっては、当時の貧民窟・浮浪児についてや時代を超えて現代の極道や海外の児童搾取についてまで調べたのですが話が短すぎて全く生かされていません。

でも趣味だからヨシ!

日本では戦前の記述に出てくるような話が、場所を変えれば現代でも行われているのは考えさせられるものがありました(勇の境遇なんかがそうですね)



光世について


八尋が真似したくなるような人……というイメージでデザインしました。


小さい頃の八尋は光世の真似ばかりしていましたが、成長するにつれて内心見切りをつけるようになります。

理由の一つが八尋の行動原理が興味・愛情であるのに対して、光世は怒りであること。

本編で八尋に光世の事を聞いたら「あの人は可哀そうな人だから」と言うでしょうね。

(久遠家に男しか住んでいないのもここら辺が関係しています)


「元巡査」という設定は、当時の巡査の殆どが貧しい農村出身の次男三男であり、給料も少なく職業柄都会で孤立する事が多かった……という話が元になっています。









勇について


当時、大病や障害等を持つ子供は神社等で物乞いをすることで、一般的な大人よりも稼ぎを出すことがありました。

その為、大人の物乞いに「借りっ子」として子供を貸すビジネスがあった……という話が元になっています。


本当に大変な事ばかりですが、世渡り上手に頑張っている子です。


八尋とはお互い趣味は合わないけど否定はしないタイプなので仲良くしています。

ちなみに、本編で花純に送られてきた小包は勇が八尋に金で釣られてお届けしていたという裏設定がありました。





最後に


大分長くなってしまいましたが、ここまでお付き合い下さりありがとうございました!


デヰツァのシナリオは全部苦しみながら書いていますが笑、追憶編2話・3話は特に悩みながら書いたお話なので、ゲーム内で伝えきれなかった部分を少しでもお伝えできていたら幸いです。


いつかこんな補足が要らなくなるくらいシナリオ上手くなれたらいいなあ……。


次回は追憶編4話・5話の帳編です! お楽しみに!

そして今後ともデヰツァの幕切れ、並びに神海処を宜しくお願いいたします!










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